大判例

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東京地方裁判所 昭和38年(ワ)1279号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕「……によれば原告は本件土地に建坪一三坪ほどの建物を建築しそれを住居兼工場(カメラの部分品製造のため)として使用する目的で本件売買契約を結んだことが認められるから、前記認定のように本件土地のうち高圧架空電線の直下およびその両側各三メートル以内の部分には建物を適法に建築することができず、その適法な建築が可能なのは東南の隅におよそ二坪五合たらずであるということは本件売買契約の目的物たる借地権に瑕疵(以下本件瑕疵という)があるものといわなければならない。そこで、本件瑕疵がはたして隠れたものといえるかどうかについて考えるに、高圧(電気工作規程にいう特別高圧を含む。以下同じ)架空電線と低圧のそれとは使用されている電線の直経の太さなどから通常比較的容易にこれを識別することができ、また高圧架空電線の下方に建物(とくに工場としての)を建築しようとする者は通常その高圧架空電線の存在に危険を覚え、はたして建物を適法に建築できるかどうかにつき不安を抱くであろうことは経験則上認められるところである(原告本人尋問の結果によれば原告も昭和三七年一二月八日被告服部の使用人である宇田政文および松尾勝利らに連れられて本件土地を見に行つた際、本件土地の上空を通過している高圧架空電線を見て、はたして本件土地に原告の希望しているような建物を適法に建築できるかどうかにつき不安を抱いたことが認められる)。

もつとも、工場建築の目的で土地の借地権を買受けようとする通常人に電気工作物規程の内容を知つていることを要求することは苛酷にすぎ、また高圧架空電線に流れている電流かはたして何ボルトであるかは一見して明らかであるとはいえないから、建物の建築が禁止されるのが具体的にどの範囲であるかを一見して知ることは困難であるといわなければならない。

しかしながら、前記のとおり工場建築の目的で土地の借地権を買受けようとする通常人がその土地の上空を通過している高圧架空電線の存在に危険を覚え、はたして右電線の下方に建物を適法に建築できるかどうかにつき、不安を抱く以上、たとえば地方公共団体の建築行政を担当する係員に質問するなどして調査をするなどある程度の注意を用いたならば、建物の建築が禁止される具体的範囲を知ることが比較的容易であるといえるから、このような場合には高圧架空電線のために建物の建築が禁止されるという瑕疵はそもそも隠れたものとはいえないと解するのが相当である。 (西川豊長)

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